宮城県栗原市入の沢遺跡は、国道4号線築館バイパス工事に伴い昨年度に宮城県教育委員会により発掘調査が行われ、古墳時代前期の防御性の高い集落であり、きわめて保存状態が良好で重要な遺跡であることが判明しました。宮城県考古学会は、入の沢遺跡の学術的重要性に鑑み、遺跡保存の要望書を下記のとおり関係機関に平成27年6月18日付けで提出しました。
「栗原市入の沢遺跡の保存に関する要望書」提出先
国土交通省東北地方整備局長様
国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所長様
宮城県知事様
宮城県教育委員会教育長様
栗原市長様
栗原市教育委員会教育長様
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平成27年6月18日 |
国土交通省東北地方整備局長様
国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所長様 |
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宮城県考古学会 会長 田中則和 |
栗原市入の沢遺跡の保存に関する要望書
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宮城県栗原市入の沢遺跡は、国道4号線築館バイパス工事に伴い昨年度に宮城県教育委員会により発掘調査が行われ、古墳時代前期の防御性の高い集落であり、きわめて保存状態が良好で重要な遺跡であることが判明しました。
入の沢遺跡は、丘陵頂部を大規模な環状にめぐる溝で囲い、その内側には丸太を立て並べた塀が巡っています。溝の外側には、土塁が造られていた可能性も指摘されています。囲われた内部には、竪穴建物が密集して造られており、多くが火災で焼失しています。このような遺跡の構成は、防御を強く意識したものであると言えます。
竪穴建物の一つからは、鏡をはじめ様々な玉類や鉄器が大量に出土しています。他から出土したものを合わせると、鏡は4点出土しています。当時の社会において権威を示すこのような遺物の存在は、この遺跡において当地域の政治的リーダーが活躍したことを意味します。なおかつ、それが防御性の高い施設で守られていたことを示しています。
このような遺跡は、古墳時代には類例が知られていません。古墳時代には、宮城県北部は古墳文化が広がった北端の地であり、北海道に源を有し南下してきた続縄文文化と対峙する地域でした。入の沢遺跡の、他に例の無い防御を強く意図した様相は、当地域が異なる文化との境界領域であったということが強く関係していると考えられます。そのため、当時「倭国」と呼ばれた、古墳時代の大和政権と外部との関係を考える上で、重要な位置を占める遺跡です。また、入の沢遺跡の北側に奈良・平安時代の城柵遺跡である伊治城が立地することは、この場所が、古墳時代から一貫して交通の要衝であり、南北文化のクロスロードであったことを示しています。
古墳時代に北方世界との窓口と言える位置を占めた宮城県の歴史を考える上で、入の沢遺跡はかけがえのない遺跡です。古墳時代の政治的リーダーたちの活躍を、日常の生活の場である集落遺跡から解明できるという点において、他に例のない重要な遺跡です。遺構の保存状態もきわめて良好で、防御施設の様子が詳しく判る点でも、その学術的重要性は高いと言えます。以上のような入の沢遺跡の重要性に鑑み、宮城県考古学会では下記のとおり要望いたします。 |
記 |
1.バイパス計画を変更し、入の沢遺跡の遺構の現状保存を図ること。 |
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平成27年6月18日 |
宮城県知事様
宮城県教育委員会教育長様
栗原市長様
栗原市教育委員会教育長様 |
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宮城県考古学会 会長 田中則和 |
栗原市入の沢遺跡の保存に関する要望書
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(国土交通省東北地方整備局長宛と同文) |
記 |
1.入の沢遺跡の遺構の現状保存を図ること。
2.入の沢遺跡の国史跡指定を視野に入れ、将来に向けた整備と活用を図ること |
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本件連絡先: |
〒980−8576 仙台市青葉区川内27−1
東北大学大学院文学研究科考古学研究室気付
宮城県考古学会事務局(担当:鹿又喜隆)
TEL 022−795−6071 |
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(2015/6/25追加・更新) |